2008-08-28

古都文学賞 で 優秀賞 を受賞しました!

 あれは今年の3月くらいだったでしょうか。Tさんが新聞の切抜きを片手に「私、これに応募しようと思ってな。奈良の俳句を募集してんねん。どう?」と車椅子をこぎながら持ってこられた。「へぇ、入選したら10万円の旅行券か、いいじゃん」と私は答えた。
 Tさんはいつも、時間をみつけては日記のようにせっせと自分の思いを書き綴っている。
新聞を読むのも毎日の習慣、そして広告の裏の白いのをみつけては、書きまくるのである。朝起きて朝日が綺麗だったとか、今日はこんな行事に参加して楽しかったとか、時には色恋ものもある。見せにくるときはいつも生き生きとして楽しそうなのである。
 限られた生活空間、団体生活はそう自由にはいかない。そんな中にいるから余計に、なのだろうか。その日記からはTさんの感受性の豊かさが感じとられるのである。もし、私がこのような施設で生活していたとしたら、もし、私が歳をとっても・・こんな些細な事に感動しながら生きていけるだろうか?と自問してしまう。
 
 5月末の締め切り間近、「もう締め切りやねん、いろいろ悩んでな」と候補作を持ってこられた。はっきり言って私は俳句なんぞさっぱりなのである。
そこで、短歌をやっていたというボランティアさんの力を借り、みて頂いた。そんなこんなで2作品を応募することになった。締め切りギリギリである。

・ 肩ならべ 歩いてみたい 猿沢の池
・ ホルンの音 耳立てて聞く 親子鹿

 7月に入り「ねぇねぇ、こんな封筒が届いたから、見てみて」とまだ開封していない封筒が。差出人は「古都文学賞」主催・・・とある。Tさんと胸おどらせて開封する。



 この度は「古都文学賞」にご応募頂きまして誠に有難うございました。(省略)・・・
さて、審査の結果、誠に残念ながら、貴方様の作品は選外となりましたので、ここにご報告申し上げます。
 しかしながら、選外の作品の中から優秀作を特別にラジオ放送させて頂くことが決定し、貴方様の作品が選ばれました・・・


「えぇ~!ラジオ放送、ラジオ放送だって!」私たちは何度も読み直し喜んだ。しかしこの手紙を開封するまでに、放送日はもうとっくに過ぎていたのだった。落胆するTさん。なんとか聞かせてあげたい、その思いで主催会社に電話すると、快く「いいですよ。CDデータに入れて送りますよ。」とのことだった。ラッキー!頼んでみるもんだ!

そして、首を長くなが~くして待つこと3週間、やっと到着したのである。「来た!来た!」
「あんた聞いてみて、どんなんかしらん」「わかった、とりあえず聞いてみる、でもせっかくだから皆で聞こうよ」
そんな流れで、その日のおやつ前、皆があつまったフロアで、CDカセットをひっぱり、ラジオの録音を聞いたのでした。なんとTさん、最高年齢での応募だったそうである。(89歳)

優秀作に選ばれたのはこの一句でした。


ホルンの音 耳立てて聞く 親子鹿


 Tさん、良かったね。いくつになっても「夢」と「希望」をもって前向きに生きていったら楽しいことはいくらでもあるんですね、そんなことをTさんから教わった出来事でした。


スタッフ A.G

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